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聖者の行進

以前勤めていた会社の上司でとてもユニークで楽しい方がいました。Mさんとします。
Mさんは普段は無口で、たまに出る一言がめちゃくちゃ面白くて、強面なので緊張しますが大好きでした。
私は今でもそうですが、大人数での飲み会が苦手で、当時は苦手以前に最初から馴染めないと
決めつけていたところがありました。

Mさん主催の忘年会の時、会場は和食屋さんの畳の大広間の貸し切りだったと思います。
一部署に一人は必ずいるはずのお祭り男もその時はおらず、ところどころで少人数での
会話が聞こえてくるみたいな、いわゆる盛り下がった雰囲気になってました。
その時突然、Mさんが「オー、ウェンザー、セイン、・・・・ゴー、マーチーニーン」と
アカペラでゆっくりと歌い始めました。
皆何が起こったのかとMさんを注目。
Mさんは周りの視線など気にせず、指を鳴らしながら歌い続けます。
「Oh, Lord, I wanna be in that number, When the saints go marching in.」
聖者の行進です。

歌いながらゆっくり立ち上がり、品定めするように周りを見渡し、
一人の男性社員の肩をたたきます。
彼は察しがいいタイプで、戸惑うことなく歌に加わります。
続いて一人、もう一人と肩をたたかれ、前の人の両肩に手を置く形で数人が列になります。
5人くらいになったところで、肩をたたかれた人が次の人の肩をたたいてから
列に加わるシステム〈のちに流行ることになるフラッシュモブの原型な気がします〉が出来て、
10人くらいになると列が輪に変わります。
だんだんと輪が大きくなり、歌のテンポもどんどん速くなり(導入:『君が代』、
人を増やす段階:『Happy(ファレル・ウィリアムズ)』、フィナーレ:『Help(ビートルズ)
の出だし』くらいのテンポ)、全員で輪を作ったところで、予期できなかったフィナーレを迎えます。

大合唱で終わった時には、一つのことを全員でやり遂げた充実感と、それに反比例する喉の渇きとで、
おおいに吞み、大声で話し、笑う、という大宴会となるのでした。
凄いマジックを見てしまった感覚。

その後、私はMさんからテンポアップの仕切り要員に任命されることになるのでした。
リズム感がいい、というのが理由でした。
歌の速度を調節するために手を叩きながら歌の合いの手を入れる係です。
時には合いの手をサッチモ風にするなど工夫もしました。

聖者の行進のキモは、“最初のひとり”にかかっています。
Mさんが“最初のひとり”の選択を間違えたところを私は見たことがありません。
いつも違う人指名だし、お祭り男デフォルトでもないし、大所帯の部署だったので、
ハナから狙いをつけておくことは難しい。
眼力なんです。
部下から親分と慕われ、絶大なる信頼を得ていたMさんの「人を見る目」があってこそ可能なことで、
誰もが出来ることではない、迂闊に手を出しちゃならねぇ、と心に誓いました。

2023/06/23        002   |   

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